2013/12/09 羊毛、毛糸のおさらいー羊毛の性質編ー
今回は、毛糸についての続きで、羊毛の性質についてのお話です。
毛刈りをして一房の毛から、一本繊維を引き出してみると、
ちりちりと、ウェーブ状態だということがわかります。
このウェーブのことを「クリンプ」と云い、他の繊維には無い、特徴になります。
細い繊維程、クリンプは多く、
クリンプのおかげで、糸になって繊維がからみあう際にできる隙間に、
空気を沢山含むことが出来るので毛糸の服は暖かく感じたり、
伸縮、弾力のある糸になります。
その繊維をさらに拡大してみると、
表面は、鱗状の「スケール」に覆われていることがわかります。
芯の部分は、2種類の層からなっており、
毛が生える際、早く角質化する(パラコルテックス)層と、
遅くれて角質化する(オルソコルテックス)層を張り合わせたような構造で、
よじれて伸びる為、クリンプのあるちぢれた繊維になります。
表面のスケールも、羊毛の特徴で、
このスケールが、水滴をはじくので、汚れづらく、
蒸気や湿気を吸い、湿気をすうと発熱するので、あたたかいのです。
また、毛は乾いている間は、弾力があってシワになりにくいのですが、
蒸気を吸ったりして濡れた状態になると、シワになり易いという性質もあり、
その性質を利用して、スチームアイロンでプリーツをつけたり、形を整えたりできます。
(昔、布団の下にプリーツスカートを敷いて寝たのは重しだけの効果だけでなく、
蒸された状態で理にかなっていたのかもしれないですね……)
羊毛はアクリルに弱く、スケールがガサガサになってしまいます。
羊毛には良くないのですが、それを利用して、フェルト化させることが出来ます。
アルカリ性の石鹸や合成洗剤で、強くごしごしと洗うと、
ガサガサになったスケールが絡み合って、フェルト化します。
熱いお湯などで、羊毛をいじめても、早くフェルト化します。(やけどしないようにしてくださいね)
フェルト化する時には、毛と毛が絡まって縮むので、大きさも縮みます。
洗濯機にかけてニットが縮んでしまうのは、繊維が絡み合って縮んでしまうのだと思われます。
きつく編んだニットは、縮む余地が少ないので、元からあまり変化の無いフェルトに、
粗く編んだニットはギュッと縮んで、分厚く固いフェルトになります。
ニットの作品をフェルト化させると、また表情が変わっておもしろいです。
でも、大事なニットウェアーは縮ませたくないですよね。
そんな時は、羊毛に優しく扱って下さい。
中性洗剤を使用し、35度程度のお湯で、優しく押し洗い。
洗濯機で洗えるセーターや毛糸は、このスケールを、薬剤で取り除いていたり、
樹脂でコーティングして、繊維をつるつるの状態にして、フェルト化しないような工夫がされています。
今回も随分長くなってしまいました。
でも、羊毛の性質を知っていると、制作の巾や、お手入れの仕方が変わってきますよね。
お手入れと云えば、羊毛は天然繊維で、虫の好物なので、防虫対策もしてくださいね。
講義みたいな内容で、食傷気味ですが、また機会を見つけてちょこちょこお話しできたらと思います。